フィリピンが外貨を獲得している3つのビジネス

かつて「アジアの病人( Sick man of Asia)」と呼ばれていたフィリピン。今では発展が著しいASEAN各国においてもトップクラスの経済成長を遂げている国となりました。HSBC発行の「The World in 2050 From the Top 30 to the Top 100」によると、世界193カ国中、2050年までの間で最も高い経済成長を果たす国 はフィリピンとなっています。世界GDPランキングは、43位(2010)→16位(2050)になると予測されています。 そんなフィリピンの経済を支えているのはどんなビジネスなのかを見ていきたいと思います。

貧困国から新興国へ
発展しているマニラ中心地(左:BGC、右:マカティ)

◆ フィリピンGDPを支える3つのビジネス
1:BPO
2:カジノ
3:OFW

◆BPO
BPO(Business ProcessBusiness Process Outsourcing)は、業務の外部委託という意味です。先進国の大企業のバックオフィス業務がフィリピンに集まってきています。BPOの世界シェアの約12%をフィリピンが占めていると言われます。BPOによりフィリピン経済が盛り上がっています。

フィリピンの人件費は安価で、一般的なサラリーマンの賃金相場は月収5万円ほどです。さらに、英語がネイティブであるため海外の企業が進出しやすくなっています。外資の税制優遇も進んでいることもあり、海外企業の進出を後押ししています。ドゥテルテ大統領が就任してから一層フィリピンの治安が良くなり政情も安定してきたこともあり、近年さらに海外企業の進出が進んでいます。

欧米諸国と時差があることもBPOが盛んな大きな理由です。例えば、ニューヨークとマニラの時差はちょうど12時間であり、アメリカでは夜に当たる時間帯はフィリピンでは昼間に当たり、24時間体制のバックオフィス業務を実現することが可能になります。時差と高い英語能力があるため、バックオフィス業務の中でもコールセンター業務の割合が高く、コールセンターの全体売上は既にインドを抜いて世界第1位です。IBMやMicrosoftなどの世界的大企業がコールセンターを設置しています。

フィリピンにおけるBPO全体の売上は約230億ドル(約2兆6,000億円/2016年)で、世界市場の約12%を占めています。BPO市場の労働者数は約130万人に及びます。

BPO
フィリピンのBPOの様子

◆カジノ
フィリピンは政府主導で大規模なカジノ計画が進められています。フィリピンのカジノ市場規模は、2010年に5.6億ドル、2015年には倍以上の12億ドルを超えました。将来的には、ラスベガスやマカオよりもさらに大きい、世界最大級のカジノリゾート「エンターテイメントシティ・マニラ」を完成させていく予定です。カジノ産業は新たな成長の柱として、フィリピン経済に大きな経済効果をもたらしています。

近年、リアルカジノのみならず、オンラインカジノの拡大も著しく進んでいます。特に、中国人を相手にしたオンラインカジノの需要が高く、急速にオンラインカジノ市場が伸びています。中国はカジノに対する規制が厳しく、その規制を逃れてカジノで遊びたい中国人に対してオンラインカジノサービスを提供しているのです。

マニラのオフィステナントに占める業種の割合
2018年(内円)vs 2019年(外円)

しかし、中国当局からフィリピンに対して、中国人向けのオンラインカジノを取り締まるよう要請が来ています。2019年8月末に行われた北京での両首脳の会談の前には、習近平主席がドゥテルテ大統領にフィリピン・オフショア・ゲーミング・オペレーター(POGO)のスキームを終了するように依頼するだろうと言われており、ゲーミング規制当局のPAGCORはすでに2019年末までPOGOライセンスの新規発行を一時停止しています。最近、フィリピンにおいて違法にオンラインカジノを経営している中国人たちが一斉に検挙されて、益々規制は厳しくなっていくように思われます。

中国当局からの要請で少し厳しい規制がかかってはきているが、フィリピンがカジノ大国として成長することに歯止めをかけるほどではありません。今後も、世界No.1のカジノ大国へと成長を遂げていくでしょう。

左:OKADA MANILA 右:CITY OF DREAMS

◆OFW
OFW(Overseas Filipino Worker)は、フィリピンの出稼ぎ労働者のことを指します。フィリピンでは、人口の10%(約1,000万人)がアメリカを中心とした海外で就労をしています。フィリピン人は英語がネイティブであるため世界中で仕事ができます。

出稼ぎによる海外からフィリピンへの送金金額は、銀行送金による金額だけでも1兆円を超えます。現金で持ってくることもあるので、そうした統計には載らない非公式の金額を含めると、2兆円から3兆円程度に及ぶと言われています。

政府は1982年にフィリピン海外雇用庁を設立し、国民の海外での就労を奨励する環境作りを進め、様々な優遇措置も設けています。

少子高齢化により労働力不足に陥っている日本では、「技能実習制度」を設け一定の技能を習得した外国人労働者の受け入れを積極的に進めています。特に、日本語教育が進んでいて場所的にも近いフィリピン人の受け入れは益々進んでいくと予測されます。

①BPO、②カジノ、③OFW、この3つがフィリピンの外貨の稼ぎ柱となっています。今後もこれらのビジネスの拡大が予測され、益々フィリピン経済は活況を呈していくこととなりそうです。